たくや
次は、飲食店さん目線で地元産の豚肉をどのように感じているのか。
今までたくさん色んな豚肉を調理したりして味わってきたプロの評価をお聞かせください!
くれない
もちろんおいしいですよ。
ただ、どこの豚肉でも秋田県産だから良いってことじゃないですね。
もとい
スーパーで売っている、多種多様なブランド豚があるじゃないですか?
くれない
地元産だと八幡平ポークさんとか、笑子豚さん、桃豚さんなど、色々ありますよね。
もとい
そんな立派なブランドでまとめられたものより、私は、この人が作っていると消費者が分かることが大切なのではないかと思っています。
よもぎだ
生産者の顔がより見えるということでしょうか?
もとい
そうですね!
まあ細川くんのように、生産者自身が美味しそうであれば、
豚肉もたぶん美味しいんです!(笑)
くれない
細川くんに始めて会った時に本当に美味しそうって思った。
くれない
本当に人柄って大事で、
あっぷる豚を使わせてもらう際も「あっぷる豚」という名前にインパクトはあるけど、お肉として実際のところどうなのかな?って最初は思ったんです。でも、生産者の阿部さんという方にお会いする機会があったんですが、すごく穏やかな人で、こんな人柄の方が作っているお肉だったら信用できると思い、今も使い続けています。
くれない
次の機会にぜひ。
どんな人かというと、
地域の人たちが阿部さんを応援していて、
地域に必要とされている人なんですよね。
やっぱり商売は人柄ですよ!
くれない
そのあっぷる豚なんだけど、
面白い話で、夏は桃を食べさせてピーチ豚になるの!(笑)
たくや
初めて聞いたそれ。夏のピーチ豚(あっぷる豚)も気になりますね。
もとい
話は変わるけど、三元豚って言ってもたぶん複数の生産者がいるよね。
それぞれの作り方ってあるんじゃないのかなって思って。
たくや
ありますよね。私たちもグループなので、ひとつのブランドに対して4つの農場が関わっています。ですので、若干のズレがあると感じる部分はあります。
例えば○○三元豚とか、ブランド銘柄として三元豚を生産しているグループ農場さんは、ある一定の品質水準を満たしている個体だけを〇〇三元豚として販売していて、その水準を満たすように各農場さんが豚を育て、肉質を均一に保とうとしています。トウキョウXなんかもそうですね。
もとい
やっぱり野菜とか米とかのブランドって、自分は半ば半信半疑に感じるとこがあって、だれが作っているのかが一番重要な気がする。
たくや
ブランドって世の中に溢れていますからね。
価値が果たしてどこまであるのか。その他に何か特質性がやっぱり必要で、それがひとつ生産者の顔かなっていうのがあると思います。
もとい
例えば「雪の下にんじん」はあちこちで作ってる。
その中でも美味しいのはここのだっていうのはあるもんね(笑)
よもぎだ
いぶりがっこも生産者によって味が違いますもんね。
くれない
全然違う。うちは無添加のいぶりがっこを買うんですけど、そこの生産者のお父さんは、
「サッカリンで味付したほうが旨めど~(笑)、味気ねぐねぇが?」って。(笑)
よもぎだ
話は変わりまして、
紅玉さんについて伺います。
地域の食材を生かした手作り料理が、お店のコンセプトになってるじゃないですか。
お店を始めたきっかけっていうのは?
くれない
じゃあ、話しちゃおうかな(笑)。
私の出身は大潟村で、農業ばっかりのところで育って、ここに嫁いできました。今まで身近にあった地元の野菜を買おうと思ったら、その頃は道の駅もないし、スーパーには地元の物ってなかなか無くて、どうやって買えばいいんだろうって思いましたね。
ふくたち(秋田県南部が発祥の冬野菜)が出てきたときに春を感じるじゃない?私が育った場所が雪の無いとこだったから、何でも年中あったんです。でも横手は雪が多いから。(笑)
それで、もともと設計の仕事をしてたんだけど、秋田には現場も少ないし、人もいないし、自分の仕事は無い。だから必要とされてる仕事を伸ばした方が良いよねって。
やれる事とやりたい事って絶対違うし、自分が社会に出て人のお金をもらう時はやっぱり人の役に立ちたい。そんな時、たまたま料理教室に通っていて、プロとしてというよりも、人をもてなす料理は作り慣れていたから、人の家族が楽しむ姿を見る料理を提案したいなと思ったんですよね。それが本当の最初のきっかけ。
お店の図面も私がひいて、内装も手がけました。ちょっとおしゃれに気を使っている人も気に入るようなデザイン性があって、尚且つ、地元で農業をやってるようなおじいちゃんやおばあちゃんも気軽にお店に来れるような空間、というのを意識して作ったんです。
くれない
階段も1枚1枚手で運びましたよ!今座っている椅子もテーブルも基さんと一緒にネットで探したんですよ。家具は家具屋さんに行っても高過ぎて買えない。でも中古の物でも悪いのは買いたくない。内装に合わないのは買いたくないから、オークションで落札したり、必死になって探しました!(笑)
たくや
血吐いたんですか?病気だったんじゃないですよね?(汗)
くれない
商売ってやっぱりお金がかかるでしょ?
だから商売やってる人の大変さがすごく分かりました。何とかなる、じゃだめなんですよ。やっぱり本気出してやらなきゃ。
血を吐いた季節が冬で、雪の上の鮮血が日の丸になりました。(笑)
くれない
すごかったですね。普段でも冬場って体調崩しちゃうことが多くて、なんでかなって思ったら、冬って動物は基本冬眠に入るじゃないですか?その時に何か事を起こそうとすると、倍の力がいると言われているそうです。整体の先生から聞いた話なんですけどね!
それで、なるほどなと思いましたね。
もとい
一旦話を戻すと、さっきの手作り惣菜っていうところ。
それと地産地消が結び付くきっかけも話しておいた方がいいと思うんです。
もとい
最初の頃ですが、高級食材を買い付けてきて、きらびやかなお料理を作って提供する方向でやりかけたんです。でもそれって生活に密着したものなのか?根付くものなのか?と悩んだ末にあっちこっちに勉強しに行って、見てきて、横手でやるには地元が楽しいっていうコンセプトがないとだめなんじゃないかなって思って。ちょうどその時、野菜農家がうちに「こんたの使ってもらえねべが?」って来るようになってきて地元の食材を使い始めたんです。
そうやって、最初は野菜果物の生産者とやり取りしてて、次は紅鱒の養殖やってる人と取引が始まって。魚まではきたけど、どうやったら肉って仕入られるんだろうってなって。そしたら本当にタイミング良く、お肉の卸をやってる柴田畜産さんと知り合って。普通の豚肉使うんじゃなくて、秋田県産の豚肉を使ってみたいんだよ!という相談をして。どうせ使うのであればいい出汁がでそうな細川くんの豚肉かなって。
もとい
細川くんから出汁とったらすごいよね?(笑)
よもぎだ
はい。
地元産のお肉をどこから仕入れるって意外と分からないものなんですか?
くれない
最近は色々聞くじゃないですか?本当に前は分からなかったです。
たくや
私も生産農家として、店の人に肉欲しいって言われても、流通のさせ方が最初分からなくて、柴田畜産さんの話がさっきも出ていましたが、そういう方たちとタッグを組んで今でこそやれていますが、そこの生産者と、最終の買い手を繋ぐ真ん中の部分ってなかなか見えないですよね。この業界って。不透明というか。
もとい
野菜とか果物は生産者さんと直接取引できるんだけど、肉は途中に様々な流通がからんでくる。そう考えるとちょっと難しい。
たくや
肉ってあまりクリーンじゃない。グレーな人たちもいるから。(笑)
たくや
ホ○○ンとかも扱う人たちもグレーな感じ。
だから、そういうとこに下手に足つっこんでもね。
くれない
兵庫の友達から聞いたんだけど、
神戸ビーフの話。
かなり絡んでるからね。特に関西は。
もとい
話戻すと、柴田畜産さんがいないと、成り立たなかったなって思います。
よもぎだ
横手近辺だと生産者さんと飲食店さんを繋ぐキーマン的な存在なんですかね。
(次回につづく)